注:知人である竜次氏から頂いたテキストを、そのまま掲載しています。

 

 基本ネタ元は諏訪大社。諏訪大社の祭神はタケミナカタと八坂刀売。また、下社には事代主(タケミナカタの兄)も祀る。 

 タケミナカタは出雲系(大国主の子でスサノオの孫)で武勇に優れているが、祭神としては風神。ただし、シルフのような風そのもの、ではなく、天候を意味する「風」の神(なので東方緋想天の異常気象に繋がるし、異常気象に際して諏訪参りの神話伝承がある)。故に河川湖沼の、ではなく雨に関わる水神の性格と天候神として連動する豊穣の神としての性格も持つ。また「タケ」の名を持つとおり、武神としての性格も持つ。そして諏訪湖の(河川湖沼の)竜神の性格も持ち、山岳狩猟神としての側面も持つ。

 諏訪大社では上社後宮に座す。各宮は四方を御柱で囲い結界としている。蛙がからむのは蛙狩神事の関係かね。温泉の関係か、つねに蛙がいるそうな。

 八坂刀売命。タケミナカタの妃とされているが、来歴が解らない。女神に一般的な「比売(ヒメ)」ではなく「刀売(トメ)」なのが特徴。妃なのに乙女かい。それともタケミカヅチに対するフツヌシを模して刀の字を当てたのか?性格的にはフツヌシよりタケハヅチの方が近いようだが。公式には上社前宮に座す。が、風神録においては通俗の下社が女神で上社が男神の説を取っている模様。

 後代の創作である古事記(儂は古事記偽書説に立っているので、その点注意)においてはタケミカヅチに敗れて諏訪に封じられた(蟄居させられた)ことになっている。しかし、鹿島系(タケミカヅチ系)神話・民話を追うと、タケミカヅチ乃至その上位神によって鹿島と並ぶ日本の霊的要所である諏訪の鎮守に任じられたことになる。そしてその流れに一致するのがタケミナカタの諏訪平定神話。諏訪大社と並んで風祝の社としてタケミナカタを祀る建御名方富命彦神別神社はこっちの神話に基いて創建されている。ついでに、タケミナカタの洩矢支配方法は国譲りにおける出雲支配と同じ方式なのでタケミナカタは天孫の意を受けて守矢を支配したと考えた方が良いのではないだろうか。古事記では天津神に敗れる国津神代表を割り当てられているタケミナカタが諏訪では天津扱いだし(この件後で触れる)。ま、スサノオ系出雲神は天津系と言えると思うが。

 諏訪平定ではタケミナカタが洩矢神を平らげている。「諏訪大戦」の元ネタは古事記ではなくこっち。従って風神録においては、八坂刀売が元ネタである八坂神奈子こそがタケミナカタで洩矢諏訪子が古い洩矢神となる。 八坂といえば八坂天王スサノオであるように、八坂は出雲系を含む天孫系の象徴とも言える(実際には弥栄を齎した(ことになっている)新規入植者/征服者の象徴だろうが)。タケミナカタの母神、奴奈川姫にからむ伝承には天孫系を示す「天津」をつけているものもあるし、一方の洩矢には「国津」をつけることがある。八坂瓊勾玉は三種の神器だけど、大国主が国譲りで幽界に去る時にも身につけていたし。奴奈川姫(民話・土着神話におけるタケミナカタの母)の八坂の子で八坂加奈子かも。諏訪の海神(諏訪湖は見立て海)としてだけでなく八坂の河川系水神ということで竜・蛇かも。諏訪湖から流れる天竜川で洩矢と戦ったのでスペルカードに。

 タケミナカタの諏訪平定で見ると、タケミナカタの母神、奴奈川姫から「厭い川の翡翠」に繋がる。糸魚川(旧表記は厭川)の翡翠が奴奈川(奴=瓊=翡翠)姫(沼河比売/高志沼河姫)。その子(よって糸魚川の翡翠がタケミナカタの源で、被征服の原因との掛け言葉になる)であるタケミナカタを八坂にしたとすれば、話は解りやすい。鉄輪は洩矢の武器。ミシャグジは洩矢の祟神ということになっているが、諏訪のミシャグジは本気で調べないと色々取りこぼしそうなので、面倒だから投げ。ところで、諏訪湖を退いた洩矢神は御射山に移ったという伝承があるようだが、だとすると「御射山御狩神事」ってのは色々解釈出来るな。

 以下、スペルカード関連・他。

 「宝永四年の赤蛙」から、蛙を山、特に口を火口になぞらえている(宝永火口が出来た)と考えれば、水神に呑まれて火口湖となる(「蛙は口ゆえ蛇に呑まるる」)と解釈できるか。そのものズバリの諺だと、翡翠(神器である勾玉の原料)を産するが故に呑まれる、になるのか? 赤蛙については蛙狩神事で狩るのが赤蛙であることと、噴火の赤富士を掛けているのか。あるいは、宝永四年の天変地異(富士山噴火のほか地震とそれに伴う津波がある)の一つに諏訪に大きく絡むものがあるのかね。善光寺再建?

 開式が二拝二拍一拝なのは出雲系二拝四拍一拝ではないことでタケミナカタとは別系であることの表明を兼ねているかも。

 「手長足長さま」この妖怪は東北地方で有名な悪鬼だが、各地の山の鬼として分布している模様。天候神としての性格と噴火現象の妖怪化との面を持つ。が、諏訪の伝説では悪鬼としての側面は削られて諏訪大明神の配下神となっており、手長神社がある。一方、赤沼の河童は悪河童の模様。手長足長って、手足を伸ばして魚を獲ったり、人を水に引きずり込んだり、と河童みたいなことをやる。

 「七つの石と七つの木」はまだノーチェック。元ネタはミシャグジ系の諏訪七石・七木な訳だが、それに纏わる伝説は具体的には調べていない。守矢(守屋)神社もそうだが、神社本庁系では無いようで手持ちの資料には載っていなかった。正直追加で調べるのは面倒なので投げ。

 諏訪七不思議が元ネタなのは「神の粥(五穀の筒粥)」「ディバイニングクロップ(多分、御作田の早稲のからみ。2ヶ所の御作田のことというだけかもしれないけど)」「葛井の清池」「お天水の奇跡(宝殿の天滴。「雨の源泉」もそうかも)」「神が歩かれた御神渡り」。

 「目処梃子乱舞」は御柱の運び出しに使う目処梃子。「アンリメンバードクロップ」「ヤマトトーラス」が指すものが判らないなぁ。

 東風谷早苗はもっと判らない。「忘却の祭儀」「一子相伝の弾幕」は守矢神官家の故事を指すのだろうが、その後「サモンミナカタ」とくるからなぁ。まぁ、守矢神官はそのまま諏訪神官としてタケミナカタ神官になっているわけだが。<BR>

 オマケ。タケミナカタは農耕豊作・狩猟大猟(ついでに配下の手長彦で漁業豊漁だ)という豊穣神であるが、神名に「建御名方富」と「富」をつけることもあるぐらいの神なので貧乏巫女は末社として諏訪子を迎えるべきだと思ふ。まぁ、緋想天で「風神脚」なんか使っているのはエンディングで迎えたから会得なのだろうけど。

 ま、とりあえず単純ネタメモなのでこんなとこで。